3.9 治験
処理概要
臨床試験(治験)における保険外併用療養費制度の対応を行う。
<条件および範囲>
1.治験分の会計入力およびレセプト作成をできるようにする。
2. 保険給付分の会計において,「薬評」「器評」のコメントコードと,フリーコメントコード等で当該薬剤または当該医療機器名を入力できるようにし,レセプト摘要欄に記載を行う。
3. 上記,「薬評」,「器評」が会計入力された場合に,レセプト特記事項欄に「11 薬治」「12 器治」の記載を行う。
4. 治験対象分(検査,画像診断など)を包括する特定入院料や管理料を算定している場合は,治験対象分の点数を包括する診療行為の点数から差し引いて算定をできるようにする。
<処理詳細>
• 保険番号マスタの登録
治験の保険番号範囲は「900」~「919」とする。
保険公費種別区分は「9」(治験)を設定すること。
(保険番号マスタの登録はユーザが任意に行う)

【V02】保険番号情報入力画面の治験登録例
保険番号マスタ設定時の留意事項
1. 点数単価設定に10円が指定された場合(未設定時は自動的に10円とみなす)は,負担割合に任意の値を設定できます。
2. 点数単価設定に10円以外が指定された場合は,負担割合に0%または100%のいずれかを設定すること。
(0%以外の設定がされた場合は100%とみなして窓口計算を行う)
<患者登録>
患者登録画面で治験保険を登録する場合は,本人家族区分の初期表示を「本人」とする。
※「家族」への変更は不可
補助区分は「1 課税」を初期表示します。
<治験分の会計入力>
保険組合せの初期表示が治験の場合は,診察料の自動発生を行わない。
治験保険の会計入力は包括診療診療行為の判定処理を行わない。すべて出来高入力とする。
治験保険は自費保険等と同様に各チェック・各自動発生・算定履歴作成を行う。
ただし,治験の給付にならない診療項目について,治験保険で入力を行われてもチェックは行わない。
<治験の保険を使用した場合の患者負担計算>
(1)入力事例
治験の保険番号マスタ設定:点数単価 12円
負担割合 100%
入力内容:エフピーOD錠2.5 2.5mg 3錠×7日分入力

【K02】診療行為入力画面の治験薬登録例

【K03】請求確認画面
(1)負担金額は,端数処理なしで計算を行う。(1円単位の計算)
点数 671点 × 単価(12円)= 負担金額 8052円
今回診療分請求額は「101 システム管理マスタ」-「1001 医療機関情報-基本」で「請求額端数区分-医保」に設定された内容で端数処理を行う。
(2)減免の設定があれば減免計算の対象とする。
<治験分のレセプト作成>
- ・治験分レセプトは印刷指示画面で自費の欄に集計を行う。
- ・請求管理データは作成を行わないこととする。
- ・レセプト電算処理提出用データも作成を行わない。
- ・入院レセプトの診療科記載は主科設定時は記載を行わない。( )のみ記載を行う。
- ・摘要欄の保険履歴は記載を行わない。
<保険給付分のレセプト記載と会計入力>
1. 以下の評価療養が実施された場合,保険給付分レセプトに特記事項の記載と摘要欄へのコメント記載を行うこととする。
・医薬品の治験に係る診療
・医療機器の治験に係る診療
2. 「薬評」,「器評」の入力
保険給付分の会計において,診療種別区分を入力後に「薬評」「器評」のコメントコードとフリーコメントコードで当該薬剤または当該医療機器名を入力する。
"820000094 (薬評)"
"820000095 (器評)"
.210 | * 内服薬剤 | |
820000094 | (薬評) | |
810000001 | エフピー錠2.5 | × 1 |
.500 | * 手術 | |
820000095 | (器評) | |
810000001 | 冠動脈造影用ガイドワイヤー | × 1 |
「薬評」は以下の診療コードを使用して入力できるようにする。
"630010011 薬評(内用薬)"
"630010013 薬評(外用薬)"
"630010012 薬評(注射薬)"
.210 | * 内服薬剤 | |
630010011 | 薬評(内用薬) | |
810000001 | エフピー錠2.5 | × 1 |
対象薬剤(器材)はフリーコメントでなく薬剤(器材)コードで入力できます。
.210 | * 内服薬剤 | |
820000094 | (薬評) | |
610421338 | 【先】エフピー錠2.5 2.5mg | × 1 |
※薬剤(器材)コードについて数量を画面入力してもレセプトへの数量記載は行いません
3. 「薬評」,「器評」入力の補足事項
- ・「薬評」,「器評」の剤は,処方箋(院外)・お薬手帳・薬剤情報提供書・入院処方箋・注射処方箋の印字対象としません。
- ・処方箋(院外)をカスタマイズして使用している場合はプログラムの修正が必要です。
※修正方法は最終頁に解説 - ・処方箋(院外)以外の帳票は修正の必要はありません。
「薬評」,「器評」の剤は,「前回処方・再印刷指示」画面(KA01),入院処方帳票印刷指示画面(KA02)に明細の表示は行いません。受診履歴内の投薬が「薬評」,「器評」のみである場合は,受診履歴を選択しても明細の表示はありません。
入院外で注射薬の「薬評」を算定する場合は,薬評コードを入力した後に手技料が削除できます。「.310」「.320」「.330」を入力して自動発生した注射手技料の直下に薬評コードを入力し注射手技料を削除,または,注射手技料の入力コードに薬評コードを上書き入力してください。
※手技料を自動発生しない診療種別を使用すれば削除は必要ありません。
4. レセプト摘要欄の記載
入力された「薬評」,「器評」は,レセプト摘要欄へコメントとして記載をします
レセプト電算提出用データでは以下の内容をフリーコメントコード"810000001"に置き換えて記録を行ないます。
"630010011 薬評(内用薬)"
"630010013 薬評(外用薬)"
"630010012 薬評(注射薬)"
薬剤(器材)をフリーコメントでなく薬剤(器材)コードで入力した場合
5. レセプト特記事項の記載
「薬評」「器評」の会計入力がされた場合は,レセプト特記事項欄に「11 薬治」「12 器治」の記載をします。

【「薬評」「器評」入力されたレセプト記載】
6. 例外算定
治験対象分(検査,画像診断など)を包括する特定入院料や管理料を算定している場合は,治験対象分の点数を包括する診療行為の点数から差し引いて算定を行う必要がる。
保険外併用療養費の支給対象 = 当該包括点数 - 当該包括点数に包括されている項目
所定点数を合計した点数
例1) 外来診療料算定時に治験を実施し,外来診療料に包括される尿一般の検査を実施した場合
外来診療料 70点
尿一般 26点
保険外併用療養費の支給対象 = 70点 - 26点 = 44点
この場合,以下の方法で入力を行うこととする。
診療種別区分を入力後,"199000210 包括点数の治験減点分"の診療コードに続けて点数とコメントを入力する。
入力した点数をマイナス点数として算定する。(※この例であれば治験減点数は70点まで入力可です。超過時はエラー表示を行う)

【K02】診療行為入力画面の治験減点分入力例

【K03】請求確認画面(※表示例は協会+治験の保険合計分)
例2)特定集中治療室管理料を算定中に治験を実施し,管理料に包括される体表ヒス束心電図,
呼吸心拍監視の検査を実施した場合
特定集中治療室管理料(7日以内) 8,760点×7日 = 61,320点
体表ヒス束心電図 150点×7回 包括分
呼吸心拍監視(3時間超)(7日以内) 150点×5回 1,800点
保険外併用療養費の支給対象 = 61,320点 - 1,800点 = 59,520点
この場合,以下の方法で入力を行うこととする。
診療種別区分を入力後,"199000210 包括点数の治験減点分"の診療コードに続けて点数とコメントを入力する。
入力した点数をマイナス点数として算定する。

【K02N】診療行為入力画面の治験減点分入力例
特定集中治療室管理料で7日間入院した患者に治験減点分(-1800点)入力した患者の退院登録を行うと,入院料の点数は以下の計算になる。
入院料 59,520点 = 特定集中治療室管理料の算定点数(61,320点)- 治験減点点数(1800点)

【I04】退院登録画面

【「包括点数の治験減点分」のレセプト記載(入院)】

【「包括点数の治験減点分」レセプト電算記録(入院)】
退院登録時に「負担金計算に失敗しました。包括点数の治験減点分の点数を確認してください」のメッセージが表示された場合は以下の状態にあることが考えられる。(入院レセプト作成時の「包括点数減点分の点数確認」,定期請求時の「包括点数の治験減点分の点数を確認してください」のメッセージについても同様)
a.医学管理等の点数 < 診療区分13の包括点数減点
b.在宅医療の点数 < 診療区分14の包括点数減点
c.入院料等の点数 < 診療区分90・92の包括点数減点
各診療区分ごとの月内総点数を「包括点数の治験減点分」点数が上回った場合に,メッセージ表示が行われるので,診療入力した内容を再確認すること。
<その他>
日次統計の統計データ作成
治験分は統計データに記録されるレセプト種別コードを「8888」(自費)として記録する。
月次統計の統計データ作成
治験分は統計データに記録されるレセプト種別コードを「8888」(自費)として記録する。
データチェック
治験分は自費分のチェック時に併せてチェックを行う。「薬評」「器評」の入力された剤はデータチェックの対象外とする。